BOSS OD-1 ET23E

 11月のある日、しばらく使ってなかった鞄の中から黄色い物体を発見した。BOSSOD-1である。なぜ??って感じであったが、すぐにある記憶がよみがえった。

 OziFest∞でのことである。KIZZAceO”氏より、”これ壊れちゃって音が出なくなったんだけど、どうせ壊れてるんでどうなってもいいから修理してみてくれない?“とOD-1を渡された。KizzPaulY”氏の機材らしい。今年のOziFestは翌日が仕事なので極力お酒は控えようと思っていたのだけれど、なんだか楽しくて例年以上に飲んでしまった。どうも、これを預かって帰った記憶を失わせるのに十分な量を飲んだらしい。鞄の中からこれを発見するのに二ヶ月ほどかかってしまった。

:Sel:名称未設定フォルダ:DSC_5485 3.jpg 預かったOD-1は見るからに歴戦の勇者たる風格を備えている。OVER DRIVEのつまみは曲がっている。OVER DRIVEのつまみは結構動きが軽くて、LEVELのつまみは動きが重い。これは元々こういうものなのだろうか?LEVELの方がワッテージの高いポットを使ってるのか??見た目は変わらないけど。ペダル部分の固定用のネジはなくなって閉じられない状態で電池のスナップは劣化して裏側がむき出しになっている。最近まで音が出ていたのならこの辺のパーツの単純な接触などの問題かもしれない。

 なにはともあれ、OD-1の実機を扱うのは初めてのことである。ましてや中身をいじる事など滅多にない機会なので、可能な限りの検証も行ってみたい。

 OD-1の資料は制作記事や、諸氏の努力で起こされた回路図など結構たくさんネット上で手に入る。それらの中におそらくBOSSが修理用の資料として配ったものと思われるSERVICE NOTESと書かれたシートのスキャナ画像があった。英文なので輸出仕様かもしれないが、信頼性としてはこれ以上のものはないだろう。(Roland提供としてある本に載った回路図にはいくつか間違いがあったけどねフランジャーの項参照) それには、基板のパターンはないが基板上のパーツの配置が記されている。もちろん回路図もある。修理に入る前にそれを元にこのOD-1を見てみよう。

SERVICE NOTESSecond Edittionとなっている。First EdittionQuad OP Amp仕様のことだろうか? また、ET5201-510A(ET-23D)という記述がある。たぶん基板の隅に書かれているこれ(写真)のことだろう。Paul機のはET5201-510B(ET-23E)でたぶんSERVICE NOTESのものより一世代若いものなのだろう。

 基板上のパーツの配置を見てみるとSERVICE NOTESのものとほぼ一致している。よく見るとD10,R28,Q5,D3Paul機にはない。どうも、LEDの点灯に関する部分のパーツのようだ(僕が入手したSERVICE NOTESをここに転載するのはたぶん問題があると思うので興味のある方はネット上で探してみてほしい)。初期のOD-1LEDがペダルを踏んだ時だけ点灯してエフェクトONの時に常時光ってるわけではないというのをどこかで読んだ気がする。SERVICE NOTESにもそれらしTranscend:OD-1 ET23E:Sel:名称未設定フォルダ:DSC_5481.jpgい記述がある。ET-23Bはエフェクトモードの時にLEDが点灯しないのだそうだ。エフェクトモードで点灯し続けるようにする改造法も記されている。LEDのブルーのリードをQ3のコレクタにつないでいくつかのコンデンサの定数を変えるようにとなっている。Paul機の基板のパターンと照らし合わせるとLEDQ3のコレクタに直接つながっておりET-23Eはどうもこの改良を実施した形となっているようだ。エフェクトモードでLEDが点灯しないのはET-23BとなっているがET-23Dはどうなんだろう?どういう動作をするのか回路図からは僕にはわからない。SERVICE NOTESをさらに読むと、改造すると消費電流が当然増える、ET-23Dは電力消費にも配慮してあるが電池を節約したかったらR29 (LEDと直列に繋がっている)3.9kに上げるようにと書いてある。回路図ではR29はもともと3.9kと書かれているのでたぶんET-23Dもエフェクトモードで光り続けるのだろう。そもそも、LEDが消えてしまうのはなんとも不便な仕様だ。電池の消費を気にしてのことだったのだろうか。

 いずれにしてもこの辺りの世代差は音とは無関係の部分のようだ。




 以下各パーツについて
SERVICE NOTESの記載とPaul機の実装を比較してみよう。

 がんばって抵抗とコンデンサの定数を照合してみたところすべて一致するようだ。カラーコードの読みに間違いがなければ….

 記載ではOP Ampはμpc4558cとなっている。NEC製の4558のことだと思う。Paul機のはNEC c4558cと印字されている。たぶん同一のものだろう。

:Sel:名称未設定フォルダ:DSC_5463.jpg クリッピングダイオードは1S2473 or 1S1588となっている。Paul機のものは外見から1S1588ではないようなので1S2473なのだろうか?よく取りざたされるOP Ampの違いよりクリッピングダイオードが変わった方がよほど音に影響があるのではないかと思うのだが、複数種類が指定されているのはメーカー側にもそんなにこだわりがないという事だろうか?実際に聴き比べた事はないのでいつか実験機を作って試してみたいと思うのだが、思いたってからすでに数年経過している。

 入力段と出力段のエミッタフォロワは2SC732、これもその通り。電子スイッチのフリップフロップのトランジスタは2SC9452SC1815となっている。Paul機のは2SC945だ。

 電子スイッチのFET2SK30だが、エフェクト側がYランクでバイパス側はGRランクが指定されている。わざわざランクを分けるのはどういう意味があるのだろうか?Paul機のFETも指定どおりのランクが使用されている。エフェクト側は歪み回路でリミッターがかかってるようなものだが、バイパス側の方はダイナミクスレンジを重視してIDSSに余裕が必要だということか??どっちもGRランクじゃだめなのか??? ここはorじゃなくてわざわざ単一指定になってる。ひょっとしてFETでも歪んでるのか????自作ものはトゥルーバイパスにするのでこの辺りはざっくり取り去る部分だがエフェクト側のFETは残すべきだろうか?????  まさかね。

 見たところ抵抗はみんなカーボンのようだ。フィルムコンデンサは緑色でXiconに似てるけど印字は違うな。電解コンデンサはteleconと印字されてる。メーカー名なのだろうが知らない。電解コンデンサに音を通すのってなんだか好きじゃなくて自作ものにはカップリングコンデンサは1μFくらいまではフィルムコンデンサを使ってる。これも実聴検証した訳ではない、”しーなな工房”特有の根拠のないこだわりだ。実機では当然のようにパスコンと同じ電解コンデンサでカップリングされてる。

 また、回路図に記されている基板外に出る部分に打たれた数字と実際の基板の端子に打たれた番号も一致することがわかった。当然か。

 その昔、ギターを始めた頃OD-1をまだ楽器屋の棚で見かけた気がする。新しいのはトーンが付いてるからそっちにした方がいいよ的なことを店員に言われたような気もする。しかし、結局SD-1も買わなかった。アンプで歪ませるなんて贅沢はプロの領域の話だと思っていた頃だ。音作りの解説にオーバードライブとディストーションを直列にして使うのをよく見かけたが二つ買うのがもったいなくて、一つでよく歪んでくれるBOSSのヘヴィーメタルってヤツを使っていた。最近は自分のアンプを持ち込まずに現場にあるMarshallを使う時には回路図を見て作ったOD-1もどきを使っている。もっと歪んでないと下手なのがバレるからだ。アンプの歪みを足すブースターとして使う場合、トーンコントロールはアンプ側ですればいいわけでオーバードライブにトーンが付いているのは変なクセをつけるだけのような気がして好きでない。OD-1の根強い人気はそう思う人が結構いるってことなのか?IbanezTube Screamerはあんなに復刻されてHand wiredなんてのまで出てるのにOD-1は復刻されないね。山口百恵のような潔さもOD-1人気を後押ししているのだろうか?何にせよ、今OD-1の実機をいじるのは感慨深いものがある。こんな機会をくれたAce氏とPaul氏に感謝である。なんか長くなったので一旦項を閉じよう。修理に関する思い出は次の項で。
Transcend:OD-1 ET23E:Sel:名称未設定フォルダ:DSC_5434.jpgTranscend:OD-1 ET23E:Sel:名称未設定フォルダ:DSC_5438.jpg

 
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